自然環境か景観か

 

「自然の景観をこわす」という理由で、竣工寸前の風力発電の風車に建設ストップがかけられた。

 

場所は「黒い森」で有名なシュバルツバルト地方、シャウインスランド村に風力発電の巨大風車の2本の支柱が周辺のもみの林をみおろして聳え立っている。

プロペラをヘリコプターで運んで取り付け、さてこれから、環境にやさしい風力電気を供給するてはずの寸前にこの事件が持ち上がったのである。

 

ストップをかけたのは州のトイフェル首相(キリスト教民主同盟)。

「シャウインスランド村の2本の風力発電用巨大風車は、自然と周辺の風景をひどく侵害するため不法」としてすでに与えられている建築許可を撤廃した。

 

すなわち南バーデン地方監督庁をとおして市に建築許可の撤廃を指令したわけである。

この指令は建築許可をあたえたフライブルクのザロモン市長(緑の党)を憤慨させた。事実、こういったものの建築申請には関係諸機関への事前諮問があり、この場合、ほとんどの機関が同意、たった1ヶ所、州議会の請願受け付け委員会が、数名の住民の反対を取り上げ、多数決でシャウインスランドの風力発電風車の建設に反対意見提示している。

 

これを州首相は取り上げたのである。この住民反対とはシュバルツバルト住民運動で「風力発電風車による自然風景のアスパラ化を防ぐ」もので、この運動の背景にはシュバルツバルト観光協会とかスキー協会がある。

 

この指令にたいして市長は反対書類を提出するであろうし、風力電気会社は市にたいして損害賠償を請求してくるであろう。そして市は当然これを州にまわす。

 

この2本の巨大な風車の今後はどうなるか。臨時措置として一時期だけでも稼動されるか、あるいは取り壊されるか、最悪の場合そのまま放置されるか、いまのところだれにもわからない。ドイツではじめて起きた争議である。

 

自然風景、景観保存が重要か、それとも代替えエネルギー重視の経済発展か。

議論はいま始まったばかりである。

(資料:日刊紙フランクフルター ルンドシャウ 2003818日)